長演説の終りに

『亡国に至るを知らざれば、これ即ち亡国の儀に付質問書民を殺すは国家を殺すなり。法を蔑《ないがしろ》にするは国家を蔑にするなり。皆自ら国を毀《こぼ》つなり。財用を濫り民を殺し法を乱して而して亡びざるの国なし、これを奈何《いかん》。右質問に及候也』[#ここで字下げ終わり]彼はその長演説の終りにかう言うて居る。[#ここから1字下げ]『兇徒嘯集などと大層な事を言ふなら、何故田中正造に沙汰をしなかつたのであるか。人民を撲殺す程の事をするならば、田中正造を拘引して調べないか。大ベラ棒と言はうか。大間抜と言はうか。若しこの議会の速記録と云ふものが皇帝陛下の御覧にならないものならば、思ふざまキタない言葉を以て罵倒し、存分ヒドい罵り様もあるのであるが、勘弁に勘弁を加へて置くのである。苟《いやしく》も立憲政体の大臣たるものが、卑劣と云ふ方から見ようが、慾張り云ふ方から見ようが、腰抜と云ふ方から見ようが、何を以てこの国を背負うて立てるか。今日国家の運命は、そんな楽々とした、気楽な次第ではありませぬぞ。たゞ馬鹿でもいゝから真面目になつてやつたら、この国を保つ事が出来るか知れぬが、馬鹿のくせに生意気をこいて、この国を如何にするか。 誰の国でも無い。兎に角今日の役人となり、今日の国会議員となつた者の責任は重い。既往の事は姑《しばら》く措《お》いて、これよりは何卒国家の為に誠実真面目になつてこの国の倒れる事を一日も晩《おそ》からしめんことを御願申すのでございます。 政府におきましては、これだけ亡びて居るものを、亡びないと思つて居るのであるか。如何にも田中正造の言ふ如く、亡びたと思うて居るのであるか』[#ここで字下げ終わり]二十一日、政府は左の答弁書を送つて来た。[#ここから1字下げ]質問の旨趣、其要領を得ず、依て答弁せず。右及答弁候也[#ここで字下げ終わり][#地から2字上げ]内閣総理大臣侯爵 山県有朋

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